【5年目】どんな製品にも使える汎用自動機の設計

生産技術のリアル

▶ 1社目(大手電機メーカー①)キャリア連載(全10回)


①【1年目】新人時代の総集編
②【2年目】主担当として初めて任された業務
③-1【3年目前半】人生初の海外出張と新ライン立ち上げ
③-2【3年目後半】製造/製造技術との衝突と人生を変えた“異動の転機”
④【4年目】初めての自動機設計と師匠との出会い
⑤【5年目】汎用自動機設計で“どんな製品にも転用できる設備”を経験← 今ここ
⑥【6年目】他工場からの設備移管と内製文化の価値に気づいた話
⑦【7年目】50台量産ラインの地獄と組織のリアルを学んだ年
⑧【8年目】上司交代と、転職が頭をよぎった瞬間
⑨【9年目】1秒サイクルの怪物設備と転職を決めた最後の1年
◎【総集編】

入社5年目は、私の生産技術エンジニアとしての価値観が
大きく変わったターニングポイントでした。

この年に経験した「汎用自動機」の設計は、
“設備をどう使い回すか”“どう効率を最大化するか”という視点を強烈に植え付けてくれました。


■ 課長の“とんでもないアイデア”から始まった革命的プロジェクト

当時の課題は明確でした。

  • 電機メーカーは新製品が毎年発売される
  • 設備を作ってもすぐ使われなくなる
  • つまり 設備に大きなお金をかけにくい

従来の設備は“製品専用”で、
新製品が出るたびにほぼ 1から設備を設計し直す必要がある──そんな状況でした。

そんな中、課長の一言がすべてを変えます。

「どんな製品にも転用できる汎用自動機を作ろう」

正直、最初は意味が分かりませんでした。
でも構想を聞いた瞬間にハッキリ思いました。

「この人、本当にすごい…」

そのアイデアはこうです。

  • 幅600mmほどの“1台の小型自動機”をつくる
  • 工程数だけ横に連結してライン化できる
  • ワーク周りの部品だけ段替えする
  • 工程が変わった場合は、設備自体を入れ替える
  • 工程が増えたり減ったりした場合は、台数を増減する

これにより、
全く違う製品でも“大きな設計変更なし”で生産できる設備が実現できる。

まさに“夢のようなコンセプト”でした。


■ チームでの設備設計を本格的に経験

このプロジェクトは規模が大きく、
複数人で1つの設備を作る「チーム設計」 を初めて経験しました。

私はその中の一部ユニットを担当し、他ユニットとの位置関係など、
メンバーとコミュニケーションを取りながら進めました。

この経験が、

「設備は1人では作れない。チームで作るものだ」

という感覚を強く持つきっかけになりました。。


■ 汎用化のキモ──吸着⇄チャック切替ツールを開発

汎用自動機の設計で最も難しいのは
“ワーク把持方法”をどう汎用化するか でした。

製品ごとにワーク形状が違い、
吸着できないワークもある。

そこで私が担当したのが、

⭐ 吸着 ⇄ チャック

どちらにも切り替えられるツールの開発

“異なるワーク形状でも同じ設備で生産できる”ために欠かせない部品で、
まさに汎用自動機の要となるユニットでした。


■ 課長から学んだ「共通化設計」=コストダウンの本質

設備を大量に製作するプロジェクトだったため、
課長から何度も言われたのが “部品の共通化” でした。

  • 部品形状を統一する
  • 可能な限りシンプルな形状にする
  • 汎用部品を積極的に使う

これらを徹底することで、
製作コストが大きく下がり、
組立の効率や保全性まで良くなることを学びました。

この“共通化思想”は今でも私の設計のベースになっています。


■ 数十台規模の量産・立ち上げ──壮絶だが最高の達成感

最終的に、この汎用自動機は 数十台規模 で製作されました。

  • 組立作業
  • 設備据付/連結
  • 立ち上げ
  • トラブル対応

どれも大変でしたが、
チーム全員で力を合わせて 全台立ち上げ完了

振り返ると、この1年間で
「コストを下げるための設計とは何か」 を深く学んだと思います。


■ まとめ:5年目は設備のコストダウン設計を学んだ年

課長の発想力に驚き

チーム設計の難しさと楽しさを知り

共通化設計の重要性を学び

設備の“使い回し思想”が身についた

入社5年目は、
生産技術エンジニアとしての芯が固まった年でした。

✨次回

汎用自動機を全く違う製品へ展開

▶[次回:6年目|他工場からの設備移管と内製文化の価値に気づいた話
▶[前回:4年目|初めての自動機設計と師匠との出会い]

▶ 1社目(大手電機メーカー①)キャリア連載(全10回)


①【1年目】新人時代の総集編
②【2年目】主担当として初めて任された業務
③-1【3年目前半】人生初の海外出張と新ライン立ち上げ
③-2【3年目後半】製造/製造技術との衝突と人生を変えた“異動の転機”
④【4年目】初めての自動機設計と師匠との出会い
⑤【5年目】汎用自動機設計で“どんな製品にも転用できる設備”を経験← 今ここ
⑥【6年目】他工場からの設備移管と内製文化の価値に気づいた話
⑦【7年目】50台量産ラインの地獄と組織のリアルを学んだ年
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⑨【9年目】1秒サイクルの怪物設備と転職を決めた最後の1年
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