「大手メーカーに入れたから、もう一生安泰だ」 もしあなたがそう思っているなら、この記事は少し残酷な現実を突きつけることになります。 私はこれまで、自動車・電機など「大手メーカー4社」を渡り歩いてきましたが、結論から言うと、大手という温室に浸かりきったエンジニアほど、40代で「市場価値ゼロ」の危機に直面します。 今回は、4つの巨大組織を見てきたからこそわかる「大手メーカーの構造的なリスク」と、そこから抜け出すための生存戦略をお話しします。
なぜ「大手メーカー=安泰」は崩壊したのか
かつては、大手に入れば定年まで会社が守ってくれました。しかし、私が異なる業界の大手4社を見てきて痛感するのは、「組織が大きすぎるがゆえの弊害」はどこも共通しているという事実です。
給料は安定していますが、そこで働くエンジニア個人の「生存能力」は、実は年々低下していく構造になっています。具体的に何が危険なのか、深掘りしていきます。
リスク①:「調整業務」ばかりで技術力が空洞化する
最大の落とし穴は、「エンジニアなのに技術に触れる時間が圧倒的に少ない」ことです。これはどの大手企業でも共通する悩みです。
- 終わらない社内調整とスタンプラリー: 組織が大きいため、たった一つの仕様を決めるにも、他部署・関連部門との合意形成(根回し)が必須です。 決裁を通すための「説明資料作り」と「会議」だけで1日が終わることも珍しくありません。
- 「昔の課長」と「今の若手」の決定的差: 定年間際の60代前後の世代は、若い頃に自分で図面を引き、設備を設計していました。だから「技術的な勘所」を持っています。 しかし現在は、設備投資額が巨大化し、業務が細分化された結果、「設計・製作はすべて外注(協力会社)にお任せ」というスタイルが大手ほど定着しています。
結果、今の若手は「メーカーの図面を右から左へ流すだけ」の仕事になりがちです。 「発注や予算管理はできるけど、自分では図面一本引けない」。 この状態が10年続くとどうなるか、想像するだけで恐ろしくなりませんか?
👉大手の中でも「技術力」をつけるには、配属や担当工程の選び方が重要です。
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リスク②:「その会社専用人間」という市場価値ゼロの恐怖
社内の立ち回りがうまくなり、稟議を通すのが早くなっても、それは「その会社内でしか通用しないスキル」です。
- 社内独自のシステムやルールのクセに詳しい
- あの部長や役員の機嫌の取り方を知っている
- 社内用語(方言)だけで会話が成立する
これらは、一歩外に出れば「無価値」です。 大手企業という組織はある種の「宗教」に似ています。長く居れば居るほど、その環境が世界の全てだと洗脳され、外の世界(転職市場)が見えなくなります。 「転職したいが、今の会社以外で通用する武器がない」。 気づいた時には、会社にしがみつくしか選択肢がない=ラットレースへの入り口に立っているのです。
リスク③:「勘違い」したまま40代を迎える悲劇
若手時代にありがちなのが、「自分は偉い」という錯覚です。
大手企業の生産技術職は、設備メーカーや工事会社の方々から非常に丁重に扱われます。ペコペコと頭を下げられ、「○○さん、さすがですね!」と持ち上げられる。 断言しますが、彼らはあなたに頭を下げているのではありません。「会社の看板(発注権限)」に頭を下げているだけです。
私は4社の大手を経験しましたが、看板が変わっても、この構図は変わりませんでした。 しかし、この「勘違い」を抱えたまま歳をとり、いざ早期退職などで会社の看板が外れた時、どうなるでしょうか? プライドだけ高くて実務スキルのないおじさんを、高い給料で雇ってくれる会社など、どこにもありません。
リスク④:年齢を重ねると「逃げ道」が塞がれる
「嫌なら転職すればいい」と思っているかもしれませんが、30代後半〜40代になるとそのカードは切りにくくなります。
- 家を建て、35年の住宅ローンを背負う
- 子供の教育費・養育費が増える
- 親の介護問題が出てくる
守るものが増えると、「年収を下げる転職」は許されなくなります。しかし、調整業務ばかりやってきた技術力のない人間に、大手同等以上の年収を出す企業はありません。
こうして「会社にしがみつく」しかなくなったタイミングで、不本意な転勤辞令や早期退職募集が来たら? 実際に、拒否権なく単身赴任で家族と離れ離れになる人や、早期退職で年収が激減し、生活レベルを落とさざるを得ない人を何人も見てきました。これは対岸の火事ではありません。
これからの時代、自分を守れるのは「スキル」だけ
今後、AIの進化によって「調整業務」や「管理業務」の多くは自動化されていくでしょう。 また、ジョブ型雇用の浸透により、「高度なスキルを持つ人材」と「代替可能な調整役」の二極化はますます加速します。
会社は、いざとなったらあなたを守ってくれません。 早期退職のリストラ対象になった時、自分を守ってくれるのは「社内人脈」ではなく、「他社でも通用する技術力・スキル」だけです。
- 今の会社が潰れても、明日から別の会社で同じ給料が稼げますか?
- あなたの職務経歴書は、社内用語を使わずに「具体的な実績」で埋められますか?
もし不安を感じたなら、今すぐ行動を変えましょう。社内政治ではなく、市場価値を高める仕事を選び取ってください。

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