「メーカーの技術職って、なんかかっこいい響きだけど、実際きついんでしょ?」
「製品設計や研究開発に行きたいけど、配属ガチャで外れたらどうしよう」
もしあなたがこれからメーカーを目指す学生や、現状に不満を持つ若手エンジニアなら、一度はこんな不安を抱いたことがあるはずです。
私はこれまで、電機メーカーから自動車業界まで大手4社で生産技術の最前線を渡り歩いてきました。 その中で、エリートぶった研究開発部門から、毎日謝り倒している品質保証部門まで、すべての技術職の「綺麗事抜きのリアルな裏側」を嫌というほど見てきました。
今回は、私が現場で見てきた「メーカー技術職の生々しい現実」をバッサリ斬りつつ、なぜ私が最終的に「生産技術が一番おすすめ(最強)」だと断言するのか、その理由を語ります。
研究・先行開発(R&D):コスト無視の「机上の空論」集団
高学歴なエリートたちが集まる、メーカーの頭脳。表向きは一番かっこいい部署です。 しかし現場から見れば、彼らは「コストや量産性をガン無視したトンデモ仕様を押し付けてくる厄介者」**になりがちです。
彼らがCADで描くのは「原理的に動けばOK」という夢の図面。それを製品設計や私たち生産技術が「こんな形状、どうやって金型で抜くんだよ」「コストが10倍になるわ」とブチギレながら現実に落とし込みます。 さらに恐ろしいのは、何年も研究したプロジェクトが「結局、事業化できませんでした」と一瞬でお蔵入りになること。社内で「あいつら、毎日高い給料もらって何してんの?」と冷ややかな目で見られるリスクと常に隣り合わせの部署です。
開発したものが商品化される確率は10%程度なので、自分が携わったものが一度も日の目をみることがないことのほうが多いです。開発自体が楽しめる人はいいかもしれませんが、商品化されることを求めているのであれば、モチベーションを保つのが難しいかもしれません。
製品設計:「ゼロから設計」は幻想。1円を削る既存流用マシーン
学生からの人気が圧倒的に高い「花形」部署です。自分のアイデアが世に出る、と思っているなら大間違いです。
現場のリアルを言えば、「ゼロからの新設計」なんて滅多にありません。大半は過去の製品CADデータの「既存流用」と微修正の繰り返しです。 営業からは「競合より安くしろ」と叩かれ、必死に部品の肉抜きをして1円のコストダウンに血道を上げる。そしてやっと図面を出せば、今度は生産技術から「こんなの量産ラインに乗せられるか!」と突き返される。 上流と下流の板挟みになりながら、神経をすり減らすストレス過多な部署です。
品質保証・品質管理:終わりのない「謝罪と犯人探し」
会社のブランドを守る最後の砦。聞こえはいいですが、私が一番やりたくないのがこの仕事です。
彼らの仕事の半分は、社内への「警察行為」です。「ここのバラツキが基準値を超えているからラインを止めろ!」と騒ぎ、製造や生産技術から死ぬほど煙たがられます。 そしてもう半分は、社外への「謝罪マシーン」です。市場で不良品が出れば、クレームの最前線に立って顧客に頭を下げ、社内に戻っては「なぜこんな不良が出たんだ!」と犯人探しと再発防止の書類(ISOなど)の山に埋もれます。鋼のメンタルがないと、確実に潰れます。
なぜ「生産技術」が一番おすすめなのか?
さて、ここまで他部署の毒を吐いてきました。 「じゃあ、お前がいる生産技術はどうなんだ?立ち合いで他部署からボコボコにされてるって書いてたじゃないか」と言われるかもしれません。
確かに、生産技術はきついです。泥臭いです。設備の立ち合いでは、以前の記事で挙げたような他部署から好き勝手な無茶ぶりを浴びます。
👉生産技術の「理不尽な板挟み地獄」についてはこちら
生産技術はつらい?他部署からの無茶ぶりと「設備手配屋」の末路
👉私が2社目の自動車メーカーで立ち合いを苦労した記事はこちら
【転職3年目後半】製造/保全と設備メーカーの板挟み…“地獄の立会い”を乗り越えて
それでも、私がメーカー技術職の中で「生産技術」を圧倒的に推す理由は3つあります。
理由①:工場という「巨大な城」をゼロから創れる全能感
製品設計が担当できるのは、製品の「ほんの一部の部品」だけです。 しかし生産技術は、数千万円、時には億を超える予算を握り、何もない工場の空間に「生産ライン」という巨大なシステムをゼロから構築します。自分の思い描いた構想図通りに、ロボットや工作機械が動き出し、製品が次々と生み出されていく瞬間の「全能感」と「達成感」は、他の部署では絶対に味わえません。
👉私が生産技術のをお勧めする記事はこちら
【生産技術はキツイ?楽しい?】「配属ガチャ外れた」と絶望した私が、製品設計より「勝ち組」だと断言する理由
理由②:製品の「始まりから終わり」まで全てを見渡せる
他部署が「自分の担当領域」しか見えていない中、生産技術だけは違います。 図面の段階から製品設計に口出しをし、品質保証の基準を満たすための仕組みを考え、実際のモノづくりを行う製造部門の動線を設計する。メーカーの全工程を俯瞰できる、いわば「オーケストラの指揮者」のような立ち位置なのです。
理由③:圧倒的な「市場価値」の高さ
ここが一番重要です。 製品設計のスキルは「その会社の製品」に依存しがちです。しかし、生産技術が扱う「モノを効率よく、正確に作るスキル(自動化、設備設計、工程設計)」は、どのメーカーに行っても通用する普遍的な技術です。
特に、ただ設備を外注するだけでなく、自分でCADを引いて加工の苦労を知っている(内製経験がある)生産技術者は、転職市場で引く手あまたです。事実、私はこのスキル一本で大手4社を渡り歩き、年収を上げ、独立を検討できるまでのカードを手に入れました。
まとめ:自分の市場価値をどこで高めるか
メーカーの技術職は、どこに行ってもそれぞれの「きつさ」があります。 綺麗事で回っている部署など一つもありません。
だからこそ、「どこで苦労をすれば、一番自分の市場価値が上がるのか」「他社でも通用する潰しが効くスキルが手に入るのか」という視点で選んでください。 会社の看板にしがみつかず、自分の腕一つで生き抜きたいと考えるなら、私は迷わず「生産技術」という過酷で最高に面白い世界をおすすめします。


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